2009.2.19

尊皇攘夷

有川雄二郎

 

 バレンタインデーも終わった。チョコを三つもらった。年賀状と同様、数は年々減っている。しかもみんな高年齢層の女性からである(最低39歳、最高70歳)。しかし、そんなことには文句を言わないのである。私も高年齢だから。
 話は変わるが、私は、日本をこよなく愛している。
日本は緑にあふれた国土で、自然は四季の変化に富み、美しく、また繊細でしかも大胆な美術を生み、能・狂言から大相撲・浮世絵に至るオリジナルな文化を生み、日本料理も日本文学もその巧緻な技術と独創性で世界にひときわ高い孤峰を誇っている。歴史も、概して尚武の国柄で潔いものがたりで綴られている。こんな国は世界に二つとない。まさに神に祝福された国といえる。
唯一つの欠点は、そこに住む人たちだ。これがまずい。この国に日本人さえ住んでいなければ、完全無欠な国といえるのに。

 

 その悪辣な住民にもめげずに日本を愛する私は、どうしても攘夷思想に傾きがちである。西洋かぶれは気に入らない。なかでも、バレンタインデー、教会結婚式、クリスマスはの三悪は日本の生活の中に根付いて、日本人を一層悪くしている。何とかこれらの悪習を廃止できないものかと、日夜、こころを砕いている。
 バレンタインについて言うと、会社の中で、女が男にチョコレートを贈ると言う、安っぽい構造が気に入らない。そこにあるのは、会社の慰安旅行とかに見受けられる、たるんだ人間関係である。いっとき前にはやった、「ちょいわる」のように、異性に対して真剣になる勇気はないけれど、「味見」だけならしておいて損はない、というような卑しく、あさましい会社員の魂胆が見透けるのである。また、それにまつわる義理チョコだとか、ホワイトデーなど言うことがあるようだげ、これらは、第一、言葉としても汚らわしい。『義理チョコ』とはなんだ、好きなんだか、ほんととは嫌いなんだか、何が言いたいのか分からない。『義理と人情をはかりにかけりゃ、義理に傾く男の世界』と言うくらい重い義理であるが、そもそもどんな義理があるのだ、言って見ろ、人間をなめきった風俗である。広告代理店かテレビ局員ならいざ知らず、正しい日本人なら、このようなふやけた行為に手を染めてはならない。
 そもそも、二月には、古来、「節分」という立派な習俗がある。「鬼は外」、実に心地のよい響きの言葉ではないか。大声で叫んでみたまえ。うそつき社長、責任転嫁部長、臆病者課長、躁欝ババー、むっつりOL、意地悪経理、無責任新人、低能受付。しょせん会社の中は鬼だらけなのだ。床に落ちた煎り豆を年の数だけ食う、という不条理な行動をあえて行い、生まれてきたことの災厄を噛み締めるのが、伝統の節分である。政府は、政令でも勅語でもいいから、即時、バレンタイン禁止令を出すべし。

 

 次に、教会結婚式である。実は先日、私の血族で結婚式があり、多分、嫁の浅知恵なのだろうが、沖縄のリゾート・ホテルで挙式があった。まあ、そんなところでやって、参列者は多大な旅費と時間を強いられ、新婚の独善振りが気に入らないのだが、式は最悪だった。ホテルに付随した海のそばに白い洒落た教会があり、海外風でもあり、それが未熟な若者や浅はかな女をひきつけるのであろう。結婚式は日曜の午前中、ケンタッキー・フライドチキンのような白髭もじゃの神父と、給食のおばさんのような中年女性の賛美歌隊2名(!)、のリードのもとに行われた。なぜ、最悪だったか、というと、第一に耶蘇の言葉はしつこく、また生々しい。わざとらしい外人アクセントの日本語で、「あなたはー、神に誓い、一生、この女を裏切りませんか?」とか「主よ、我々はあなたのしもべです」とか、キリスト教徒でもないのに、馬鹿馬鹿しくて、付き合ってられない。神道なら、聞いていてもわけ分からない祝詞だから、頭も垂れようじゃないか、と言う気分になるのだけど。
 第二に問題なのは、みんな贋物だということである。客寄せ用の偽の教会で、偽の神父によって、(本物の神父が、毎日、ホテルの客の結婚式をしているはずがない。英会話の教師などがバイトでやっている場合が多い)、偽者の賛美歌隊にコーラスの中で、偽キリスト教徒信者の新郎新婦で、偽の耶蘇の参列者による偽の祝福による結婚式だった。参列者の中に、耶蘇でもないくせに賛美歌を一段と声を張り上げて歌っている者がおり、その偽善者を睨みつけたら、元の妻であった。わが息子の結婚式で興奮していて、目がうるんでいた。私は別れておいて、よかったなーと思った。 式が終わったら、新郎新婦は、花を投げられながら、真っ白のオープンカーでハネムーン旅行に旅立つ趣向であったが、車の行き先を見ていたら100メートル先のホテルの入り口までで、やはり偽の新婚旅行であった。
 人生の門出が、こんな偽ものだらけの結婚式でいいのか、と憤りを感ずる。
私は、愛国者だからに、結婚式は和風でいこうと思っている。お稲荷さまの社務所で、畳に長机をならべて、みんな酔っ払って、新郎新婦そっちのけで大騒ぎをする結婚式をしたいと思う。

 

 最後にクリスマスであるが、これもいろいろ問題がある。そのなかで一つだけいうと、時期が悪い。正月の用意に終われる頃でもあり、また忘年会の最中でもある。また今上陛下のお誕生日も近くにあらせられる。子供たちが楽しみしていることに免じて、廃止とは言わないが、6月頃に変えるのは如何だろう。