2013.8.13

どうかと思われる社長

有川雄二郎

 

 「社長」業界は多様であって、私のような零細企業の社長から社員10万人の世界企業の社長まであり、同じく「社長」といっても、能力・品格・収入には非常に大きな差があり(大企業と零細の社長間の人間格差は、社員間の格差よりずっと大きい)、私なども、「SAPの社長も社長のうちなら、蝶々・とんぼも鳥のうち。ははのんきだね」などと社員どもから鼻歌を唄われても、幾分かの真理があり、反論しにくい状況を呈しているのだ。

 

零細・中小業界の社長たちは、大企業の社長のような教育もなく素養もなく社会的な経験もない。みんな自己流で社長をつとめているのだ。いかに粗暴な、奇矯な、卑俗な、横柄な、陰険な、強欲な、浅薄な社長であっても、それを矯正する人は周囲になく、社外の人はあきれ果て「個性的ですね、お宅の社長は」と言い、そう言われてもこれを褒め言葉と勘違いし喜び、夜郎自大というのだろうか、「俺は大企業の社長をやっても勤まるな」と思い上がり、社長でいることに反省がない。社員は、いかに零細とはいえ修業を積まないと勤まらないが、社長は馬鹿を地のままでもやっていける。当事者である私が言うのだから、間違いがない。同病、相憐れむところがあり、私はほかの、舞台会社や俳優事務所や企画会社などの、我儘社長、脳天社長、軽薄社長が嫌いでなく、慰めあって社員の悪口なんかを言いながらお付き合いをしているのだが、それにしてもどうしてもなじめない、どうかと思われる社長もいる。

 

たとえば、以下のような社長は、どうかと思われる10の類型。
 ①「ここまで来られたのは、みんな社員のおかげです」と言う社長
    臆面のない偽善性はしばらく置くとしても、「おかげ」と感謝されている社員はみなバカ面をしていて使い物になりそうもなく、会社が「ここまで来た」と言いながら相変わらず払いの悪い貧乏会社。「ここまで」とはどこまでか?
 ②朝一番に出社し、トイレのお掃除なんかしている社長
    この社長、自宅のトイレは掃除はしていない。それにしても朝から晩まで会社漬けで、どうしてそんなに会社が好きなのか、気がしれない。私などは会社も社員も仕事も、嫌で嫌で仕方がないので、自然、普通は午後出となる。さらに夜出も多い。 
 ③金庫に小銭を出し入れを自分でする社長
    零細企業の金庫は、アイスボックスほどの小さなものだ。社長がしゃがみこんで、社員に暗証ダイヤルを見られないように背中で隠し、金庫の中身もみられたくないものだから、戸を半開きにしながら、手先で金の勘定をしている。実にあさましい姿だ。
 ④机に自分の写真を飾っておく社長
    海外の観光地での記念写真、芸能人とのツーショット、家族との写真など、自慢で、褒めてもらいたのでしょうが、お世辞を言ってあげたくとも、何一つ褒め言葉が浮かんでこない。飾ってある写真は、この社長の恥多き人生を雄弁に物語っている。
 ⑤給与明細袋に「社長からの手紙」を入れる社長
    こういう社長は、自分の手帳に社員の誕生日を書き込み、社員を「ちゃん」付けで呼び、会社全体がキャバクラ風となり、とても気持ちが悪い。会社というものの基本構造、つまり、社長と社員は基本は敵対関係にあるという事が分かっていないのだ。
 ⑥後ろに教訓日めくりカレンダーが貼ってある社長
    特に相田みつを系、「ころんだっていいじゃないか、人間だから」なんか。勉強ができない人のために、ひらがなが多いのだが、中身は、怠惰な、言い訳じみた、緊張感のないものだ。しかし、困るのは、そもそもがその社長の自戒とするためでなく、来客に相田みつおに感動し、引用して偉そうに人生訓を垂れることだ。
 ⑦研修好きな社長
    社員ではない、自分がセミナーに通うのだ。経営戦略、幹部養成、未来志向、いずれも畳の上の水練で何の役にも立たない。しかし本人はつらい現実から逃避できるのが何よりうれしく、会社にいるときの何倍もイキイキとし、講師に質問を多発し、答えに大きくうなずき、しかし会社に戻れば元の無気力社長。
 ⑧ボランティア自慢の社長
    リトルリーグのコーチ、バンド演奏の養老院回り、有機農業など、本来勝手にやっていることなのに、事細かに説明し、意義を説き、自分がいかに尊敬に値するのかをあからさまに述べ、来客が尊敬と賛辞の感想を言うまで終わらない。
 ⑨尊敬する人物は「イチロー」と答える社長
    確かにイチローには尊敬すべき人物だが、、中学生とは異なる回答がほしい。社長なんだから。
 ⑩名刺の後ろに、町内会役員などごちゃごちゃ肩書きを入れる社長
    自分の趣味一覧をいれたり、自作の詩を入れたりするのもある。他人は、あなたにそんなに関心はないのだ。

 

考えて見ると、以上のようなばかばかしい社長は大企業にはいないと思う。中小零細の社長という職種は、もっとも、無軌道で規範のないものかもしれない。